【こちらはらはインタビュー記事です】
ソクルスのレベル3まで受講され、最後の卒業試験を終了した方々を対象に、ソクルスでの学びの体験、そしてその方々のこれからの活動についてインタビューをさせて頂いた内容を、ライター小澤仁美さんが心温まる文体でまとめて下さいました。
ソクルスでの学びを知る材料に、そしてそれ以上に今まさにギフトを輝かせている人たちが、ご縁ある人たちに繋がって下さることを願ってご紹介させて頂きます。
松尾祥子さんは岐阜のIT会社に勤務して、今年で32年目。システム開発の業務だけでなく、社員の人事・研修も担当し活躍している。そして休暇になると日本・世界各地を旅してきた。
「元々父が大工をしていたこともあり、建築物に興味がありました。木の香りや直線の美しさに惹かれて各地のお寺や建築を見て旅をしているうちに、旅は好きだけど観光地を回るのは興味がないことに気づいて。自然や歴史を感じる場を選んで行くようになりました」
祥子さんと話していると呼吸が深くなるような、気持ちよくストレッチした後のような、自分が一人ではなく大きな存在の一部であることを思い出す感覚になる。祥子さんのかもし出す雰囲気を英語で表すと「Connectedness」(つながるもの・かかり合う全てのもの)という言葉に近いかもしれない。
そんな祥子さんはソクルスのことを、あるキーワードを検索しているときに知ったそうだ。
「会社では社員の相談にのることも仕事だったので、ずっと心理学を勉強していました。その中で『バルナラビリティ(Vulnerability)』という概念を知って、それを調べているときにソクルス主宰の宏枝さんのブログに出会ったんです」
バルナラビリティとは、アメリカのベレネー・ブラウン博士が提唱した「傷つく心の力」のことである。「本当の勇気とは、弱さを認めること」という彼女のスピーチの動画は、TED視聴ランキングトップテンに常時入っており、ソクルスではレベル1のクラスでバルナラビリティについて学ぶ。
「私はいわゆる長女・頑張り屋タイプで、自分は強くあらねばと思ってきました。でも強固な自分がいるなら、繊細で柔らかい自分もきっといるんじゃないかという想いでバルナラビリティのことを検索していたときに、宏枝さんのことを知りました。
ちょうど社内でコーチングへの関心が高まっていたこともあり『コーチのスペシャリストであるこの宏枝さんという人に会えばコーチングの何たるかも、バルナラビリティのこともわかるかも』と連絡してみたのがソクルスとの出会いです。でも会ってみたら宏枝さんがあんまり素敵な人だったので、コーチングスキルのことは若干どうでもよくなりました(笑)」
こうして祥子さんはレベル1(自分との対話)とレベル2(他者との対話)のクラスを受講した。ソクルスでの学びは、これまで祥子さんにあった「強くあらねば」「Beパーフェクト」の対極にあるものを見ていくプロセスだったようだ。
「以前は人に頼ることは弱みを見せてしまうようで苦手で、そもそも自分の弱い部分はあまり見ないようにしてきました。でもソクルスで自分と対話したことで、自分の中にある弱さや儚さ・優しさのような部分と一緒に歩いていけるようになりましたね。
きっと宏枝さんのマシュマロのような柔らかさが、私が私の柔らかい部分を見ることを助けてくれたんだと思います。宏枝さんは柔らかいだけでなく意志のあるマシュマロというか(笑)、ごまかしは絶対に効かない人なので、私が本当の私を見つけ出して共にいれるまでを、ずっと心からサポートしてくださいました」
本当の強さとは、盲目に頑張ることでは生まれない。例え現実に打ちのめされた時でも自分の光を思い出してもう一度起き上がる、そんな心のしなやかさが「強さ」なのではないか。祥子さんの中に光るものを見ていると、そんな風に感じる。
レベル1、レベル2のクラスを完了した後、祥子さんは一旦ソクルスでの学びをお休みして長年の目標だったヒマラヤトレッキングに挑む。無事にヒマラヤから下山した後、ソクルスレベル3の学びを再開。
岐阜から伊勢のソクルスへ通いながら「長年の目標を達成した後は、どちらの方向を向いて生きていこう?」という新たな問いと向き合っていたころ、ソクルスのレベル3(場との対話)のクラスをスタートした。
祥子さんはここで大好きな旅をテーマにした場づくりをしようと思いついたが「そこにニーズがあるのか?」としばらく悩んだ。旅程を考えるだけなら一人でも出来る。
だがザリッチ宏枝氏から「祥子さんのやりたいことは、きっとそれを待っている人がいる」という言葉に押され、最終試験では「旅を創る」というワークショップを実施した。このワークショップでは、まず祥子さんがこれまで行った旅の写真をシェアするところから始まる。
チベット高原の突き抜ける青空、雨に濡れた屋久杉、賛美歌が聞こえてきそうな五島列島の教会。祥子さんの旅の写真を見ていると、神経が休まり自分が整うような感覚になってくる。
次に参加者は一人ひとり、自分が行ってみたかった場所・やりたかったことを対話していく。話すことで忘れていた大事な思い出や、普段はお金・時間がないと蓋をしていた想いに立ち返ることができる。人は心理的に安全な場にいると、本来の自分を思い出すようだ。
そして祥子さんの土地や旅程への個別アドバイスも聞きながら、どこに泊まるか・何をするかといった具体的な行動をプランに落とし込んでいく。筆者は同ワークショップに参加したが、最終的に「いつか上高地に旅したい」と思っていた「いつか」を、現実に一歩進めることが出来た。
ふだん絵を描かない人が白いキャンバスを渡されて「ご自由にお描きください」と言われて困るように、非日常の旅は義務も責任もない分、一人で自由に旅を練るのはあんがい難しい。そのせいかこれまでは有名観光地を巡ったり美味しいものを食べるといった、パッケージ化された旅が一般的だった。
しかしリトリートという言葉がだいぶ日本でも浸透しているように、旅にもっと「自分とつながり、整える」時間を入れたいという需要は高まっている。オーダーメイドでその人の旅を彩る。祥子さんのライフワークを必要とするニーズは、確かにあったのだった。
ソクルス最終試験である「旅を創る」は合格。
祥子さんはこれからの生きる道として『リトリート職人』になるのが夢だそうだ。
「会社でのカウンセリングもそうなんですけど、人って自分のやりたかったことを思い出す瞬間、顔が輝くんですよね。そういう瞬間に立ち会えることが私の喜びなんです。その人が一番やりたいことを集中してやるための、ルートを探すお手伝いがしたい。これからは旅のプラン作りだけでなく、旅から帰った後の振り返りもご一緒したいですね。自分を調える旅や、リトリートをお手伝いできる人になれたらいいなと思っています」
最後に、ソクルス主宰のザリッチ宏枝氏について聞いてみた。
「あたたかくて、私の知らない私を見つけてくれる。私を羽ばたかせてくれる存在です。ソクルスレベル1と2で私の中にある柔らかさを思い出すことができた。ヒマラヤに登って『この山を下りた後、どちらの方向を向いて生きていこう』と模索していたところに宏枝さんが立っていてくれた。感謝してもし切れない存在です。」
目に映る全ての美しさは、その人の中にあるからこそ心奪われる。祥子さんが旅先で撮った写真の中にある、祈り・願うことの神聖さ、いのちの不思議、清い空気。その全てが自分の中にあることを思い出すのは、祥子さんが人の美しさを思い起こさせる役目を担っているからだと感じる。
森羅万象がきらめく景色へ人をいざない導く。人の旅を、人生をガイドするお役目を持つ祥子さん自身も、夏のプールに映る空へ飛び込むような躍動感でこれからも世界へ羽ばたき続けるのだろう。
【ザリッチ宏枝からの一言】
インタビュー記事にもあった「バルナラビリティ(Vulnerability)」という言葉を検索したときに私のブログに辿り着き、一度も会ったことのない私の講座をまずは受けてみようと岐阜県から何時間もかけて三重県伊勢市に通って下さった行動力は、まさに祥子さんの旅の仕方に通ずるものがあります。
レベル1の講座では、まだまだ私も祥子さんがどんなギフトを持った人なのかを模索している状態でしたが、ヒマラヤから戻れた時に数枚の写真を見せて頂いたとき、祥子さんのギフトがわかった気がしました。写真はときに、その人の心を映し出します。そしてある1枚の写真は、山の上で少女のように笑う祥子さん(この記事のカバー写真)。彼女の旅の写真を見て、この世の美しさを謳歌することを目的として生まれてきた人に感じました。そして祥子さんの眼は、何を見ても、そのものの「気配」を追っている。その「気配」を捉えることに長けている人だと感じました。
レベル3の卒業試験として祥子さんが企画した「旅を創る」ワークショップでは、祥子さんがこれまでに撮ってきた写真を一緒に見ながら、五感を通して私たちの中に眠る「願い」や「想い」を引き出し、そこから旅を企画していくのですが、その数々の写真の素晴らしさ、そして企画するときに的確に旅を組み立てていくことをお手伝いする彼女の姿に、まるで「歩く地球の歩き方!」と驚嘆するくらいに素晴らしかったです。
彼女がこれから本格的に動き出そうとしている「リトリート職人」としての活動は、多くの人を「本来の自分に帰郷する旅」へと誘うお手伝いになるのではないかと予感します。旅とは、今いる自分の場所から遠くに離れる行為のようでも、旅の仕方によっては、旅をすればするほど、自分の本当の願いや好きを発見し、より自分の心の中の故郷へと還るプロセスになっていくように思います。祥子さんは、多くの人の旅との付き合い方を、よりその人の人生にとって意味あるものにしていくお手伝いをする人になるでしょう。これからの彼女の活躍が本当に楽しみでなりません。